ピンポーン


インターフォンを鳴らすと、ドアから天元が顔を出した。
お邪魔しまーす、と慣れた部屋へと入る。



「夕飯、年越しそばでいいよね」
「ああ、ありがとな」
「今日は不死川くんたちはいないんだね」


キッチンに荷物を置いて、部屋を見渡し、嫌みっぽく言ってやったら、天元が気まずそうに頭を掻きながら、さすがにいねぇだろ、と言った。

先日のクリスマスイブの醜態は、あまり思い出したくないようだ。面白いからしばらくネタにしてやろう。













年越しそばを食べて、お風呂に入って、お酒を飲みながらゆっくり過ごす。
最高の年末だ。

ふとテレビのリモコンに手を伸ばす。




「何見んの?」
「やっぱガキ使でしょ」
「だよなー」


見るテレビの趣味が同じなので、チャンネル争いをすることはほとんどない。同じ、というか3年も付き合っていれば多少は似てくるのか、気が付いたら同じになっていた。










「そういや、善逸のやつ、よくここに来るの許したな」


天元がやや顔を顰めながら聞いてきた。
前回、我が弟にこてんぱんに言い負かされたのが相当堪えたらしい。


「年末年始くらいは譲ってやるよ、だってさ」
「ちっ、あのクソガキ・・・」
「いや、一応立派に成人済みだからね」


まぁ、2人が初めて会ったときは、善逸はまだ未成年で学生だったし、天元にとっては子供だったんだろう。
最初は弟分のように可愛がってやろうという気だったらしいが、善逸が思いっ切り反発したのだった。










「にしてもさ、本当に馬が合わないよね、2人ともさ。まぁ見てるこっちとしては面白いから全然問題ないけど」
「いや、さすがに多少は仲良くしとかねぇとマズいだろ。どうせもうすぐ義弟になるだし」



「・・・・・・・・・・・・・・・は?」





義弟?聞き間違い?酔ってるのかな、今義弟って聞こえたような。義弟になる?善逸が?天元の?







混乱した頭で天元の方をまじまじと見ると、ふーっ、と一息吐きながら天元が小さな箱をテーブルに置いた。


あれ、これはあの有名なジュエリーショップのものではないか。
え、これって、まさか??










「て、天元?」
「なまえ、結婚してくれ」
「っ!!」
「本当は、イブのときに言うつもりだったんだけどよ。当日緊張して景気づけに不死川たち呼んで飲んでたら、ああなっちまった」


悪かった、と頭を掻きながら申し訳なさそうに言う。







「え、緊張したの?天元が?ウケるんですけど」
「お前今すぐここで押し倒すぞ」
「犯罪はダメだよ」
「お前が余計なこと言うからだろーが。ムードってもんがねぇのか」
「うるさいわね。天元に言われたくないわよ」
「あーもう!んなことはどうでもいいんだよ!」


痺れを切らしたように、天元が私の肩を掴んで、元々近かった距離を更に縮めた。







「イエスか?ノーか?」
「・・・イエスしか認めないくせに」
「分かってんじゃねぇか」


そう言うと、ニヤリと笑った天元と唇が重なった。















BGMがテレビで芸人がケツバッドされている音で、ロマンチックの欠片もないけれど、まあ、こんなのも私たちらしくて良いだろう。







そんなことを考えながら、私たちは何度もキスをした。